卒業論文

2017年度卒業研究論文

失見当の体系化

地震発生時における失見当の全体像について

門脇愛

災害発生時には誰でも陥るとされている失見当は、頭が真っ白になり何もできなくなるだけでなく、 時に間違った行動を引き起こすこともある。また、性別、年齢、地震経験の有無などにより陥る失見当に違いがあることも分かった。失見当が「恐怖による影響」、「冷静さの欠如」、「視野の狭小化」という3つの要素から構成されることから、 それぞれに要素に合わせた対策を取ることで人的被害の軽減にもつながると考えられる。失見当の特徴をまとめた教材を作成して防災教育で用いたり、失見当に陥ることを想定した避難訓練を行ったりして周知させることが必要である。

リスク認知

期間・確率から見るリスク情報に対するリスク認知とその特性

髙見麻耶

本研究は、人の地震リスク情報に対するリスク認知、また各人の特性がリスク認知にどのように影響を及ぼすのかについて研究した。 アンケート調査の結果、地震発生までの想定される期間の長短や確率、各人の性別や年齢・普段からの防災への意識がリスク認知に影響を及ぼしていることが分かった。  考察として、防災活動に積極的な人は、災害に対する備えは万全であるという安心感からリスク認知が低くなること、人は「今後100年以内」といった発生想定の期間が長い表現は、イメージが難しくリスク認知が低くなることが考えられる。 リスク情報を伝える際には、できる限り発生想定が短くイメージがしやすい表現を用いるべきであるということが明らかになった。

災害時の流言に関する4段階の学習過程

災害時に発生する流言について

岩尾文香

災害時には様々な流言が発生し、人々の避難活動や心理に支障をきたす問題が発生している。 本研究は流言を多方向から収集し、事例ごとにリストアップして流言への対策につなげていこうとしたものである。流言は災害発生後の時間経過の観点から1. 災害因情報 2. 災害の再来 3. 災害による被害(一次被害) 4. 災害による被害(二次被害) 5. 災害対応 6. 被災地での生活6つのカテゴリーに分けられた。 また、状況やSNSの発展により広がりやすい流言も異なっていることが分かった平常時の流言への対策として、災害時には流言が広がるという事実を認識しておくこと、一人一人が流言の問題意識を持ち、持続的・継続的な対策を行うことが流言の発生・拡散を抑制に繋がる

アンケート調査結果

非常持ち出し袋ゲームの開発とゲームを活用するための教育プログラム開発

遠竹里美

非常持ち出し袋は一般に広く知られる災害対策であるが、実際の準備率が低い。 そこで本研究では非常持ち出し袋についてのゲーム開発、及びそのプログラムの有効性について検証している。ゲームでは様々な立場の視点から、限られた重さの中で、非常持ち出し袋の中に何を入れるかを考えることにより、実際に作成する際に気を付けるべきポイントを学ぶことができる。 そして本ゲーム実施後のアンケート図1より、有効性が実証された。

学習目標の達成度(事前、事前1(直後)、事後2(2週間後))

災害時の「食」「水」に対するわがこと意識を高める

馬野吉博

災害による被害軽減を実現するには「備蓄」が大切であるが、 兵庫県立大学の学生を対象に行ったアンケートでは災害時の食料確保は自分の備蓄に頼ると答えた学生の約半数が、あまり食糧備蓄はできていないという矛盾が明らかになった。 そこでADDIEモデルに則って防災教育プログラムを開発し、兵庫県立大学の学生に講義を行った。事前・事後1(直後)・事後2(2週間後)のアンケートを実施し学習目標の達成度を測った。 その結果、学習目標は達成されていた。また、本プログラムを行うことで災害の脅威理解が深まり、実際に備蓄を始めた学生も見られたため、防災対策について行動させる効果もあると期待できる。