修士・博士論文

2014年度修士論文

津波避難行動に関する決定木分析の結果

提案手法の概念図

「わがこと意識」向上のための災害体験談の加工・活用手法の提案

友安航太

本研究では、地震活動期である21 世紀前半を乗り越えるために必要な「わがこと意識」を高めるための体験談活用について検討した。まず、体験談を数値データにコーディングし、定量分析を行うことで過去の災害における被災者の心理・行動を明らかにする分析手法を提案・実践した。さらに、体験談そのものや、体験談から得た知見・教訓を防災教育に活用するために、防災教育プログラムの分析によって防災教育の現状の明確化を試みた。 体験談の分析では、南海トラフで発生した1 つ前の被害地震である1944 年東南海地震の体験談から、津波避難に影響を及ぼす要素を数値データ化することによって、被災者の津波避難心理・行動について定量分析を行った。分析の結果、津波避難の成否に大きな影響を及ぼす要因を抽出することができた。さらに、抽出した要因と「わがこと意識」の関連を考察した。今回の分析では三重県の事例を扱ったが、結果からは、認知バイアスによる避難の遅れといった人間特性がみられ、異なる地域でも共通する一般性のある知見が得られた。 また、コーディングの際に、避難行動に関する記述が少ない体験談が散見されたという問題を踏まえて、今後の体験談調査では、半構造化面接のような構造をもつ調査手法によって被災者から体験談を収集するべきだと提案した。 防災教育プログラムの分析では、内閣府がサポートする防災教育事業の「防災教育チャレンジプラン」の下で行われた先進的な教育プログラムを分析することで、現状の防災教育について把握した。分析の結果、整然としていなかった防災教育プログラムを4 つの類型に整理することができた。また、防災教育プログラムが充実していない領域の存在が明らかになった。中でも災害時要援護者を対象とした教育を充実させていくことは、大きな課題である。また、各類型のモデルケースにおける「わがこと意識」向上に関わる学習について考察した。さらに、体験談を活かした防災教育の展開についての検討を進めた。 本研究で提案した体験談の加工による分析手法は、伝えるべき知見・教訓を抽出するための手法であり、類型化した防災教育プログラムは知見・教訓を伝えるための手法と位置付けられる(図29)。低頻度事象である災害において、比較的容易に収集できるデータである災害体験談を加工して、量的な分析をすることで、一般性を持つ、伝えるべき教訓を抽出することができる。今回の分析では、低頻度の津波災害の中では、比較的頻度の高い10メートル級の地震津波が発生した1944年東南海地震における三重県の被災者を対象とした 。