卒業論文

2013年度卒業研究論文

離島のインタビュー結果 SWOT分析(カテゴリー別)

孤立とソーシャル・キャピタルが地域防災に与える影響力 ~SWOT分析を用いた離島と本土の比較~ 

今井菜月

離島は災害時において、孤立する可能性があるという弱みを持っている一方で、ソーシャル・キャピタル(*1)の豊かさが強みにつながる可能性があると考えられる。そこで離島の住民が普段どのような生活をし、また災害に対してどのような意識を持っているか、どのような取り組みをしているかを、島民のへの半構造化インタビュー調査を通して調べた。インタビュー結果にSWOT分析(*2)を行い、どのように防災に生かすことができるかを検討した。さらに、離島だけでなく、本土の防災にも生かすことができる教訓についても検討した。
その結果、離島において地域のソーシャル・キャピタルを高めることが孤立(弱み)に対しての備えとしての老々支援、自主防災組織の充実や防災意識の向上につながっているという、本土にも生かせる知見が得られた。

(*1)ソーシャル・キャピタル…信頼関係、規範、ネットワークといった人と人の関わりのこと
(*2)SWOT分析…調査対象の特性を、強み・弱みという調査対象そのものの力(内部要因)と機会・脅威という調査対象を取り巻く環境(外部要因)に分類する手法

食料備蓄リスト(二次持ち出し)

大学生の飲料水・食料の備蓄について ~現状の調査と解決策の提案~

久保田恭子

既存のアンケート調査から大学生の食料備蓄に課題があることが分かっているが、現状の食料備蓄の質・量や、備蓄ができている学生とできていない学生を分ける要因などの詳細は不明である。それらを明らかにするために、大学生を対象にしたアンケート調査を行った。アンケート設計は、文献調査と東日本大震災において、支援を行った栄養士へのインタビュー調査に基づいて行った。
その結果、備蓄への関心が備蓄行動に最も強く結びついていることが分かった。そこで、関心を上げるための方策として、食料備蓄リスト【災害時に持ち出せるように非常用袋に入れておくための備蓄(一次持ち出し)、長期にわ たって家に備蓄しておける食料備蓄リスト(二次持ち出し)】を作成し、それを参考にして食料備蓄を実践するといった提案をした。

災害別防災チャレンジプランの件数の推移

防災教育を充実させるための4つの提案 ~防災教育チャレンジプランを例にして~

高橋明梨

東日本大震災時に岩手県釜石市では小中学校の生存率が高かったことがわかっているが、それは平時からの防災教育が適切な行動に結びついたためだと考えられる。そこで、今後どのような防災教育を行うべきかを提案するために、「防災教育チャレンジプラン」(*1)に応募があった186の防災教育プランについてのデータセットを作成し、を分析を行った。
分析から明らかになった先進的な防災教育プログラムの特徴を踏まえて、①「地域」を意識した防災教育を行うこと、②対象者の「年齢・ライフステージ」を意識した防災教育を行うこと、③学校での防災教育には総合的な学習の時間だけではなく「教科学習」内での防災教育を行うこと、④地域で行う訓練には「継続性」と「発展性」を持たせることの4つを提案した。

(*1)防災教育チャレンジプラン…内閣府のサポートの下で行われている防災教育プロジェクト。有志の団体・個人から応募があった防災教育のプランに対して、資金面の援助、専門家のアドバイスといったサポートを行うことで先進的な防災教育の事例を蓄積している。

東日本大震災と阪神・淡路大震災における「発災から現在までの流れ」の時系列によるまとめ

災害・震災報道のあり方 ~テレビが果たすべき役割

西谷阿弓

より良い災害・震災報道のあり方と、テレビが果たすべき役割を提案することを目的として、テレビ放送における災害・震災報道の現状を実際にテレビに携わった人々に当時の状況について半構造化インタビュー調査を行い、分析・考察を行った。
その結果、より良い災害・震災報道のあり方として、メディアが力を合わせて情報を提供することが重要であると明らかになった。それを実現するためにテレビが果たすべき役割として、①現場映像などの「生の映像」に頼りすぎず、テレビ画面をスライドのように使って、文字による生活情報や地図による情報を発信すること、②全ての情報発信をテレビで賄うのではなく、他のメディアに関する情報や使い方を発信することの2つの提案を行った。

災害の種類と各バイアスとの関係

バイアスと災害時の避難行動について

三浦茜

災害時には認知バイアス(*1)が避難行動を妨げる原因となる。そこでバイアスに陥らないようにする、もしくはそのバイアスをいち早く乗り越えることができるように、普段から心がけるべき行動や災害が起こった時の適切な行動を提案した。
災害事例を基にデータセットを作成し、それを分析した結果、災害の種類によって陥るバイアスに違いが出ることが分かった。そのため、どの災害でどのバイアスに陥るのかを理解し、それぞれの対処法を知っておくことで適切な避難行動、災害対応行動をとることが可能であると考えられる。
現在、人が災害時にバイアスに陥ることを考慮した防災教育はほとんど行われていない。そのため、今後は災害とバイアスの関係性を考慮して、災害時の人間の心理状態に合わせた避難行動を防災教育に取り入れることが必要であると考えられる。

(*1)認知バイアス…直感や先入観、恐怖心や願望が論理的な思考を妨げること