修士・博士論文

博士学位論文(2020.9)

開発した教育プログラムにおける教育効果の保持の推移 (栃木県那須小学校)

防災教育を継続するための系統的な実践

マルチハザードに対応した防災教育プログラムの開発

永田俊光

 日本では、過去の自然災害の教訓をもとに、国や自治体等によって構造物・社会基盤の強化といったハード対策を中心とした災害対策が推進されてきた。しかし、近年、ハード対策で耐えうる想定外力を超える大規模自然災害が発生している。そのため、国民一人一人が、平時から災害に備え、災害時には適切な対応によって被害を軽減できるような防災教育・防災訓練などのソフト対策も求められている。
 本博士論文は、以上の背景を踏まえ、災害多発時代に社会の中核を担う子どもたちが、自然災害から命を守る「生きる力」を獲得するための学校教育における防災教育プログラムを、学習理論であるID(インストラクショナル・デザイン)理論におけるADDIE(アディー: Analysis, Design, Development, Implementation and Evaluation)プロセスに基づいて、教育プログラムを設計・評価・改善の繰り返しによって開発し、体系的な防災教育のあり方を検討したものである。
 研究1「緊急地震速報を利用した防災教育の実践」では、文部科学省が提唱する「主体的に行動する態度」を育成するため、緊急地震速報により危険予測と回避の力を身に付ける地震防災教育プログラムを現場教員と開発し、埼玉県内の小学校を対象にプログラムの実践・効果測定を行い、プログラムの有効性を確認した。
 研究2「竜巻被災地域における防災教育の実態分析」では、竜巻被災地域の児童・生徒への当日の対応行動の質問紙調査を通して、竜巻防災教育の学習目標を抽出した上で、危険予測と回避の力を身に付ける竜巻防災教育プログラムを開発し、被災地である埼玉県熊谷市内の小学校を対象にプログラムの実践・効果測定を用いてプログラムの教育効果を検証した。
 研究3「竜巻防災教育プログラムの開発」では、被災地外での竜巻防災教育プログラムを展開するため、竜巻防災教育を展開するための課題・要望を教職員等に調査した上で、被災地外である栃木県内の小中学校を対象にプログラムの実践・効果測定を行い、他地域へ展開できるプログラムとしての有効性を検討した。
 研究4「火山地域における防災教育の実態分析と火山防災教育プログラムの開発」では、小学校の地域学習等を利用した火山防災教育のあり方を検討するために、那須岳火山地域にある栃木県那須町の全小中学校を対象とした質問紙調査を行い、地域学習・理科学習と併せた火山防災教育プログラムの開発・検証を行った。
 研究5「マルチハザードに対応した防災教育手法と防災教育プログラムの精度向上」では、マルチハザードに対応した防災教育のあり方について、これまでに作成したプログラムを体系化し、栃木県内の小中学校を対象にしたプログラムの実践・検証によって、各災害を併せたプログラムの有効性を明らかにした。
 研究6「視覚障害に適用した地震防災教育プログラムの開発」では、特別支援教育における防災教育の現状や課題を、教職員への調査によって整理した上で、栃木県立盲学校を対象に視覚障害者用の地震防災教育プログラムを開発・検証した。
 研究7「知的障害のある児童生徒への地震防災教育プログラムの開発」では、知的障害のある子どもたちが、自らの危険を予測し回避する対応力を身に付けるための地震防災教育プログラムを、知的障害の程度区分(4段階)に応じて開発し、栃木県内の知的障害特別支援学校にてプログラムの実践・検証を行った。また、特別支援学校も含めた防災教育の効果的な研究と普及のあり方について、防災の専門家や関係機関・教育機関などのステークホルダー間の連携について提案した。

関連論文(査読付学術論文)
1)永田俊光・木村玲欧(2013)緊急地震速報を利用した「生きる力」を高める防災教育の実践-地方気象台・教育委員会・現場教育の連携のあり方-, 地域安全学会論文集, No.21, pp.81-88.
2)永田俊光・木村玲欧(2014)竜巻災害時の児童・生徒の対応行動の解明をもとにした「生きる力」を高めるための竜巻防災教育プログラムの提案-平成25年9月2日埼玉県竜巻災害を事例として-, 地域安全学会論文集, No.24, pp.161-169.
3)永田俊光・木村玲欧(2016)竜巻被災校の教訓をもとにした竜巻防災教育プログラムの開発と被災地外への展開の試み, 地域安全学会論文集, No.28, pp.117-126.
4)永田俊光・木村玲欧(2016)火山災害から「生きる力」を高めるための火山防災教育プログラムの開発, 地域安全学会論文集, No.29, pp.175-184. (筆頭著者・永田俊光:第16回地域安全学会論文奨励賞受賞)
5)NAGATA, T. and KIMURA, R.(2017) Proposing A Multi-Hazard Approach to Disaster Management Education to Enhance Children’s “Zest for Life”: Development of Disaster Management Education Programs to Be Practiced by Teachers, Journal of Disaster Research, Vol.12, No.1, pp.17-41.
6)永田俊光・木村玲欧(2018)視覚障害のある児童生徒の「生きる力」を向上させる防災教育―栃木県立盲学校での地震防災教育・訓練の実践-, 地域安全学会論文集, No.33, pp.115-125.
7)NAGATA, T. and KIMURA, R.(2020)Developing a Disaster Management Education and Trainings Program for Children with Intellectual disability to Improve ”Zest for Life“ in the Event of A Disaster - A Case Study on Tochigi Prefectural Imaichi Special School for the Intellectual disability -, Journal of Disaster Research, Vol.15, No.1, pp.20-40.

関連論文(国際学会発表論文(アブスト査読付))
1)NAGATA, T. and KIMURA, R.(2020)Earthquake and Disaster Management Education for Children with Intellectual Disabilities, 17th World Conference on Earthquake Engineering Conference Proceedings, No.7g-0005, 9pp.